私たちが依頼を受けて駆け付けたのは湿った岩場と呼ばれるダンジョンだった。文字通り、じめじめとしたダンジョンで水タイプの自分にはちょっと居心地がよく感じるところで、電気タイプのタイが本領を発揮できた場所でもあった。そのためか、難なく真珠のある場所まで進み、怪我無く無事真珠を持って帰ることができたのだった。
 ギルドに真珠を持って帰ると、依頼主にギルドが連絡したのか、依頼主であるるりさんがすぐに取りに来ていた。真珠を取り返せたのがよほどうれしいのかぴょんぴょんと飛び回り、お礼をしてくれた。
 渡された依頼だからやったっていうのが実情だけど、ここまで喜んでもらえるのならやってよかったなって気になれちゃうな。タイも初めての依頼をこなせてうれしいのか頬が緩み切っている。
「これ、お礼です」
 そういってるりさんが私に何かを渡してくれる。思わず受け取ったがずっしりと重い。知識のない私にはよくわからないが、横から覗き込んでいたタイが大声を上げた。
「わわっ! 2000ポケ!? こ、こんな大金貰っちゃっていいの!」
 どうやら大金らしい。目を見開き大声を上げて驚くタイにるりさんは「どうぞどうぞ。真珠に比べたら安いもんですよ」と笑った。すごく太っ腹なお人である。
 お礼も終わり、るりさんはにこにこと帰っていった。そしてるりさんが帰ったが否や、タイがものすごく興奮した様子で私に詰め寄った。近い。
! ボクたち、いきなり大金持ちだよ!」
 ふんす!とタイは息巻く。興奮しすぎだと窘めるが、正直自分もウキウキしていた。まだポケという通貨はわからないが、タイの様子からとっても大きい額ということが分かる。これには興奮しない方がおかしいというものだ。思わず口角が上がってしまう。
「よくやったなオマエたち。だが、お金は預かっておこう」
「えっ!!」
 が、近くで見ていたウタがそれに水を差した。タイが信じられないという声を出したが、自分も全く同じ気持ちだ。せっかく頑張ったのに取り上げられるなんてそんな話あるか。
「ほとんどはおやかたさまの取り分。オマエたちは……このぐらいかな」
 そう言って渡されたのはたったの200ポケ。なんとさっきの一割しかない。
「ええ~っ? 200ポケしか貰えないの!? ひどいよー!」
「これがギルドのしきたりなんだよ、我慢しな。……、そんな不服そうな顔しても無駄だぞ」
 ぐっ。思わず感情が表に出ていたらしい。でもだって、こんなの酷い。一割なんて! そう思ってむすっとしていたが、ウタの「不服ならもっと減らしてもいいんだぞ」の声によって、渋々引き下がった。これ以上下げられたらさすがに泣いてしまう。
 隣でタイが「って結構頑固なんだね……」と呟いていたが無視した。頑固で何が悪い。

 そのあと、初めてギルドでご飯を食べたりした。どうやらチリーンのメイという人が用意しているらしい。ポケモンになってから初めて席でご飯を食べたけど、すごく美味しくてお代わりをいっぱいしてしまった。食べている最中タイがぼそっと「って大食いなの?」って聞いて来たので、水鉄砲で返答した。びしょびしょになってしまったタイには悪いが、女の子に大食いとか聞いちゃうタイの方がデリカシーないと思う。私は悪くない。
 お腹一杯食べれば、すぐに眠くなってくる。今日は初めて依頼をこなしたし、疲れていたのかもしれない。大あくびをしていればそれを見ていたタイがおかしそうに笑った。
「部屋、もどろっか」
 苦笑まぎれのタイの言葉に私は弱々しく頷く。眠くてあんまり考えられなかった。早く寝てしまいたい。
 部屋へ帰った私たちはごろんとベッドに横になる。瞼はすでに重く、うとうととしていた。タイが何かを言っている気がしたけどあまり聞こえてなかった。迫りくる眠気に身を任せて私は眠りに落ちた。

「……ねえ。ってもう寝ちゃったか。今日はいろいろあって忙しかったもんね」
「でも、と初めての仕事がうまくいって良かったよ。お金、いっぱい持っていかれちゃったのは悔しかったけど、修行だから仕方ないし……」
「なにより、るりに感謝されたのがすごくうれしかったんだ。も嬉しそうだったよね」
「……まだボクたち結成したばかりでお互い何もわかってないけど、今日はのいろいろな一面を見れた気がする」
「感謝されて恥ずかしそうに喜んでたり、ちょっと頑固だったり……。いっぱい知れてうれしかったな。ボクたちまだまだだけど、きっといいコンビになれるよね」
「……ボクも眠くなってきちゃった。明日も頑張ろうね。おやすみ、

「………………に大食いって言ったら怒るの、ボクちゃんと覚えたよ」