おやかたさまに会った後に連れてこられたのは私たちに割り振られた部屋だった。ベッドがあることにタイが嬉しそうな声を上げる。
「これからオマエたちには住み込みで働いてもらう。明日から忙しいぞ。早起きしなきゃならんし、規則も厳しい」
なるほど、厳しい修行だと聞いていたし、その修行を支えるためにも規則も厳しいようだ。
「夜更かししないで今日はもう早めに寝るんだぞ。じゃあな」
そう告げたウタはくるっと踵を返してどこかへ行ってしまった。私たちはウタに言われた通り、ベッドに横になる。窓から差し込んでいる月の光はいつのまにか夜になっていたことを私たちに告げていた。ベッドの感触を感じながら考える。まさか本当にギルドに入れてしまうなんて。しかもこうやって寝て帰るところも得た。倒れて気が付いたばかりの時は思いつきもしなかったな。
「……。…………。」
もぞもぞと背中越しにタイが動いている音が聞こえた。寝れないのだろうか。
「ねえ、。まだ起きてる?」
その声に私は振り返ってタイと向き合う。まだパッチリと開かれている目と目が合った。
「ボク、今日はずっとドキドキだったけど……。でも思い切ってここに来てよかったよ。ユウももっとコワイのかと思ったけど、案外優しそうだったしさ……」
タイの声に私は相槌をうつ。私も全く同じ気持ちだった。一時はどうなるのかと思っていたけど、すんなりとギルドに入門できたのだ。そう思うと安堵の気持ちがどっと襲ってきた。
「明日からまたいろんなことがありそうだけど、でもボクそんなに怖くない。逆にこれからどんな冒険があるんだろうってワクワクしてるんだ」
どうしてだろう。がいてくれたおかげかな。とタイははにかむように微笑む。そう、なのかな。何もしていないけれど、私の存在がタイの勇気づけになったのなら、良かったような気がする。
「……少し、眠くなってきちゃった。明日から頑張ろうね。……じゃあね、……。おやすみなさい……」
その声におやすみと返せばタイはゆっくりとその眼を閉じる。そして少ししてからすうすうと規則正しい寝息が聞こえてきた。きっとずっと張りつめていた緊張や疲れが今になって来たのだろう。私も先ほどから安堵の気持ちと共にそれらが体にずっしりとのしかかってきていた。
なんだかあっというまにギルドに入門できた。再度考える。これからタイをパートナーとして、一緒に探検隊として多くの冒険をしていくのだろう。そう考えるとなんだかワクワクとした気持ちが湧き上がる。きっと楽しい。でも、それより。私は一体何者なのだろう。どうしてポケモンになってしまったのか。そしてどうしてあの浜辺に倒れていたのか。なにもわからない。
そうこう考えていくうちに瞼が少しずつ落ちてくる。私ももう限界みたいだ。わからないことを今考えていても仕方が無いし、とりあえずはギルドの仕事を頑張っていこう。そうすれば……きっと見えてくるはず……。私のことも……真実も……そのうち……きっと……。