「こ、こんなところに地下の入り口が!」
入った私たちを迎えたのは、地下へと繋がる梯子だった。外見だけを見ていたらこんなに小さい建物がギルドなのかと考えていたが、まさか地下に広がっているなんて。一人前の探検隊になるためのギルド。このギルドはその実績に恥じない大きいものなのかもしれない。
私たちは梯子を恐る恐る降りだす。そして梯子を降り立った先に見たのは広い広い一つの部屋だった。
「わぁ~! ここがプクリンのギルドかぁ!」
タイが目をキラキラと輝かせながら感嘆の声を上げる。私も同じくらい驚いていた。
外からは全く予想もできないほどの広さがそこに広がっていた。この広い部屋の中で多くのポケモンたちが活動し、動き回っている。
「ポケモンたちが沢山いるけど、みんな探検隊なのかなぁ」
この部屋には本当に多くのポケモンが居た。このポケモンたち全員が探検隊なのだとすれば、このギルドの大きさというものは規格外なのではないだろうか。
「おい! さっき入ってきたのはオマエたちだな?」
突然かかった声にタイの背がビシリと一直線に伸びる。
「はっ、はい!」
「ワタシはペラップのウタだ。ここらでは一番の情報通であり、プクリンことユウおやかたの一の子分だ」
まるで歌うかのような美声に思わず耳を傾けてしまう。だが、その声で告げられるのは妙にリアリティのある言葉だった。
「勧誘やアンケートならお断りだよ。さあ帰った帰った」
綺麗な美声に冷たくあしらわれるタイ。勧誘やアンケートって……。ギルドでもそういう勧誘が来るのだろうか。苦労してそうだ。それに対しタイは誤解を解こうと声を張り上げた。
「ち、違うよ! そんなことで来たんじゃないよ。ボクたち探検隊になりたくて……ここで探検隊の修行をするために来たんだよ!」
その声に今度はペラップのウタが目を丸くする番だった。
「えっ! た、探検隊!? 今時珍しいコだよ。このギルドに弟子入りしたいとは……。あんな厳しい修行はもう耐えられないって脱走するポケモンも後を絶たないというのに……」
とても驚いたかと思えば、ごにょごにょと小声で呟いていた。なにやら不穏な言葉が聞こえた気がするが私の気のせいだろうか。その様子に私とタイが首を傾げる。
「ねえ。探検隊の修行ってそんなに厳しいの?」
タイの言葉にウタがびくっと体を強張らせた。そしてぎこちない笑みを浮かべたかと思えば、タイの言葉を否定するのだった。
「いやいやいやいや!? そ、そんなことないよ! 探検隊の修行はとーっても楽ちん!」
取り繕う様に畳みかけるウタ。……その様子が既に怪しさ満々なのだが……。
「そっかー、探検隊になりたいなら早く言ってくれなきゃー。フッフッフッフ」
「……なんか急に態度が変わったね……」
急も急。ガラリと変わったその態度に、私だけでなくタイも若干引いていた。本当にこのギルドで良かったのだろうか?
そんな私たちを他所にウタは上機嫌に先へと進んでいく。
「じゃ、さっそくチームを登録するからついてきてね。……なにしてんの? こっちだよ。さあはやく」
ウタに導かれるまま来たのは、先ほど居たところから更に下に位置するところだった。
ギルドの地下二階に位置するここは主に弟子が働く場所なのだとウタは言う。ここでも大量にいるポケモンたちを尻目に案内されたのはおやかたさまと呼ばれる人の部屋の前だった。そして、その近くには外の景色が見える窓が。
「わあ! ここ地下二階なのに外が見えるよ!」
「いちいちはしゃぐんじゃないよ! このギルドはガケの上に立っている。だから外も見えるんだよ」
その言葉に私とタイは感嘆した。地下なのに外の景色が見えるというのは気分がいい。
「さあ、ここがユウおやかたのお部屋だ。くれぐれも……粗相がないようにな」
念を押すようなウタの声に私はごくりと唾をのむ。こんな大きなギルドを統括するおやかたさま。一体どんなポケモンなのだろうか……。
「おやかたさま。ウタです。入ります」