毎朝行われる朝礼。眠くて出てしまう欠伸をなんとか?み殺していると、ウタが羽ばたいた。どうやら今日は何か伝達事項があるみたいだ。
「え~……。遥か東にあると言われる湖には、未知の部分が未だ残されており……」
 ウタの説明はちょっと長かったので、要約するとこうだ。
 未だ謎が残されている遥か東の湖を解明すべく、ギルドの遠征として向かう先として目的地として設定したと。出発は数日後なので、遠征メンバーに選ばれるよう各自成果を上げれるよう仕事を頑張りなさい、ということだ。
 遠征の概要を聞いたギルドの面々は選出されるべく、みんな張り切っている。タイなんて遠征が楽しみなのか、その体をぷるぷると震わせている。よっぽど行きたくてたまらないんだろうね。自分もぺちんと頬を叩いて覚悟を決める。
 数日後の遠征、私たちも選ばれるよう頑張らなくちゃ。

「今日は、ここの掲示板に乗っている仕事をたのまれたんだよね?」
 地下一階。いつものように掲示板の前に立った私はタイの言葉に頷く。
「依頼を沢山こなしていけば……、きっとボクたちも遠征メンバーに選ばれるよね! 頑張ろう! !」
 やる気満々のタイを横目に、私は掲示板を眺める。
 不思議のダンジョンで迷子になってしまったという救助依頼に、回復アイテムを持ってきてほしいという依頼もある。やっぱりお使いみたいな依頼が多いんだなと思いながら自分たちにこなせそうな依頼を探していれば、タイがあっと声を上げた。
「あそこにいるポケモン……」
 その声につられるようにタイの指さす先を見つめれば、なんだか見覚えのある姿の二匹がそこに居た。なんだろう、あんまりいい覚えがない気が……。
「あーっ!」
 タイが大声を上げる。その声に二匹が振り返った。そして、タイと同じように驚愕の表情になってこっちを見ている。あのポケモンたちは……。
「ボクの大切な遺跡の欠片を奪った奴らじゃないか!」
 そうだ。あの海岸の洞窟で、タイの大事な宝物を盗んだあの悪党。ズバットとドガースの二匹がそこにいた。
 でも、なんであの二匹がギルドなんかに?
「なんでお前らがここに居るんだよ!」
「ケッ、俺たちは探検隊なんだぜ」
「探検隊が掲示板を見に来ちゃ悪いのかよ」
 今度は私もあんぐりと口を開くことになった。この二匹が探検隊……? なんというか、探検隊というよりも向こう側のお尋ね者のポスターに貼られていそうな面子なのに。
「そういうオマエたちこそ何でここに居るんだよ」
 ドガースの言葉にタイがぐっと言葉に詰まる。
 かつてのトラウマのような相手だ。少し相手が悪い。
「ぼ、ボクたちも探検隊になりたくて……」
 ドガースとズバットが口をあんぐりと開けた。でも、それも一瞬で、すぐにその口をぐにゃりと曲げて、その口から大笑いが飛び出した。
「探検隊になりたいだってぇ~!」
 ゲラゲラゲラ。
 あくどい笑みを浮かべてこれ以上の冗談は無いかのように笑い転げる二匹。カチンとくるが、ギルドの中で喧嘩なんてすればウタからの厳しいお叱りが飛んでくるのは考えなくても分かる。唇を噛みしめながらなんとか堪えた。
「オマエちょっとこっち来いよ」
 ドガースがタイの手を引っ張っていく。後を追おうとするも、ズバットに行く手をふさがれてしまった。私闘は出来ない。足踏みを踏めば、「物分かりのいい嬢ちゃんだな」と目の前のズバットがせせら笑った。このゲス……。
「ボク、大丈夫だから。は掲示板を見てて」
 遠目にタイがニッコリと笑う。その笑顔は見るだけで明らかに無理をしていると分かる笑顔だったけれど、彼がそう言うのなら私はもう何にもできなくて、すごすごと掲示板の前へと戻るしかなかった。
 ズバットはドガースとタイの方へと飛んでいく。
 本当に大丈夫だろうか……。そんな不安を感じつつも、私は無事でいてほしいと祈ることしかできなかった。