ギルドの地下一階。私たちを待っていたエリクがそこに居た。
「準備完了でゲスね! それじゃ一緒にお尋ね者を選ぶでゲス!」
エリクはそう言って掲示板を指さす。この中から選べということだろう。
「どれから選べばいいんだろう……」
あまりに多く貼られた紙にタイは首を振る。こんなにあったのではきっと選ぶのにも一苦労だろう。迷ってしまったタイと私を見て、エリクはこほんと咳込みをした。
「じゃあ、先輩としてひとつ、あっしが選んであげるでゲス」
「あ、あまり怖そうなの選ばないでね!」
突然エリクが選ぶという言葉にタイは震えあがって釘を刺す。それにエリクは苦笑してわかってるでゲスよと言って掲示板を見始めた。その時、バタン!と大きい音を立てて掲示板が回転する。突然のことに目を点にしていると、どこからかアナウンスが聞こえてきた。
「情報を更新します! 危ないですので下がってください!」
その声に私たちが首を傾げていると、エリクが説明してくれた。
どうやらこの掲示板は定期的に更新されるらしく、リクのお父さんがやっているようだ。そういう仕組みで情報が更新されるのかと納得していると、再度アナウンスの後に掲示板がひっくり返る。どうやら更新が終わったようだ。
新しくなった掲示板で再度お尋ね者を選ぼうと思った瞬間、隣に立っていたタイが震えだす。私だけでなく、エリクも不思議そうにタイを見ていた。
「どうしたんでゲスか? 急に震えだして……」
「ね、ねえ……、これ見てよ……左上のところ……」
いわれるがまま、掲示板を見る。どうしてだろう既視感があった。左上を注視してその既視感に気が付いた。そんな……そんなことって……。
「ロキさんだ……。ロキさんはお尋ね者だったんだよ!」
そこにあったのはスリープの絵。名前はロキ。―それが指し示すこととは。
震える声でタイが叫んだ。
「リルが……リルがあぶない!」
それと同時にタイは駆け出す。私も居ても立っても居られずそのあとを追った。
エリクが慌てて私たちの声を呼ぶが、それどころではなかった。時間は一刻を争った。
ギルドを抜け出し、十字路まで走るとミナくんが慌てた様子でそこに居た。タイがミナくんにリルちゃんとロキさんの行方を聞くが、落し物を探す最中でロキさんがリルちゃんを連れ去ってしまったらしい。
遅かった……。苦々しく思うが、まだリルちゃんが無事かもしれない。その一縷の望みにかけて、ミナくんが二人を見失ったトゲトゲ山に私たちは突入した。
「、が夢の中で見たロキさんとリルちゃんは山みたいな場所って言ってたよね?」
目の前に襲ってくるポケモンたちをなんとかなぎ倒しながら、私は答えた。私が夢で見たのはまさにこのトゲトゲ山のような景色だったと。
「そっか……。じゃあ二人はここにいる可能性が高いってことだ。急ごう!」
私はその声に強く頷いて歩みを速めた。リルちゃんに何かがある前に、ロキさんが何かをしてしまう前に。早く、早く助け出さなくては!