「あなたたち、誰」
が声を上げた。すると廃墟の奥から二人組が出てくる。あの服はどこかで見た覚えがあった。何だろうかと思い出そうとするとが呟く。
「プラズマ団……」
「おやおやバレてしまってはいけませんねぇ。しかし、今回の目的であるムンナを見つけられたのでよしとしましょう」
そう言って下卑た笑いを顔に浮かべる。なんだこいつら。ポケモン解放とか言ってたやつらだったはずだけど、なんで野生のムンナを探してるんだ。
「ほらほら! 夢の煙をだせ!」
もう一人のプラズマ団がムンナを蹴り飛ばす。そして笑っていた団員もその反対側に回ってはムンナを容赦なく蹴り始めた。
「何やってる!」
「ムンナやムシャーナは人々に夢を見させる煙を出すそうじゃない! それを使って人々にポケモンを解放させるような夢を見させるのよ!」
目の前の光景に思わず声を荒げたの言葉にプラズマ団は笑いながら思想を語る。こいつらイカれてるんじゃないのか?
「そんな目的のためにポケモンを蹴っているの? ひどい! やめたげてよぉ! どうして? あなたたちもトレーナーなんでしょ?」
「そうよ、私たちもポケモントレーナー。そして私たちが戦う理由は貴方たちと違ってポケモンを自由にするため!」
「そして私たちがポケモンを自由に
するとは! 勝負に勝ち、力づくでポケモンを奪うこと!」
「なるほどね……」
力づくで奪う? 何を言っているんだこいつらは。無意識のうちに拳を握りしめていた。こんな奴らが何でいるんだ。何でこんな奴らが自分が正義のように語っているんだ。
「というわけで、お前たちのポケモンを全力で救い出してやる!」
「あっそ、やってみなよ」
まるで地を這うような声が聞こえてを見た。そして目を見開く。出会ってから一度も見たことの無いような表情のがそこにはいた。冷静のように見えて、その実、目には怒りが込められた、そんな表情だった。口調も心なしかいつもよりも荒くなっているような気もする。
「まさかっ、お前」
「やんないの? 奪うんじゃないの?」
「くっそ! お前、このガキ二人相手しろ! 俺は此奴をやる!」
その言葉と同時にムンナを蹴っていた団員が俺とベルに立ちふさがる。喚いていたもう一人の方はに立ちふさがった。こんな奴を相手して大丈夫かとの名前を呼ぼうとするが、はふっと笑って手を振るだけだった。
「こんな奴、30秒もかかんないよ」
そう言ってはボールを取り出す。俺たちの前の団員もボールを構えていて、俺とベルも急いで臨戦態勢に入るしかないのだった。
本当にあっという間だった。カチリとボールに収まる音がして流し目でそちらを見れば白銀の何かがのボールへと戻っていった後だった。俺もなんとか目の前の下っ端を倒してに駆け寄る。
「! 大丈夫か」
「うん平気。ベルとトウヤは?」
「私たちも大丈夫だよぉ!」
ベルの言葉にが安心したように微笑む。
「き、聞いてないぞ! お前がイッシュに来ているなんて聞いていない!」
「言ってないからね。まあ、そのうちバレるとは思っていたけど」
ひぃっと後ずさるのはと対峙していた団員。俺たちと対峙していた団員は訳が分からないとでも言いたげな顔をしていた。
「この女がなんなの? ただのガキじゃないの?」
「知らないのかお前! こいつは、こいつはこいつはこいつは!」
錯乱状態のように叫ぶ団員。が、何だっていうんだろう。俺はその団員の言葉の続きを聞こうとしたその時だった。
緑の髪の男が至る所に現れたかと思うと、なにやら恐ろしい空気をまとわせて団員たちを叱ったかと同時に夢のように掻き消えてしまった。
「げ、ゲーチス様! これは演説で人を騙して操ろうとするときのゲーチス様じゃないわ!」
「ああ、失敗したとき……そして処罰を下されるときのゲーチス様……」
「とにかく今すぐ謝って許してもらいましょう!」
プラズマ団たちは視線を右往左往させたかと思うと、なにやらわからないことを相談し始めて我先にと逃げ出してしまった。ゲーチス様って誰だ。というか何が起こったんだ。
俺たちが呆気に取られていると、廃墟の奥からふわりふわりとこちらへ向かってくるポケモンがいた。ムンナと同じような感じがするけれど、ちょっと違う。
「今のなに……? ゲーチスって人いっぱいいたよね? 現実じゃないのかな……」
「わ、わかんない……」
どうやらもわからないようだった。誰もさっきの減少が分からず首を傾げていると「あー! ムシャーナ!」という女性の声が響いた。さっきの怪奇現象が起きた矢先に突如そんな声が聞こえたものだから、全員が恐る恐ると振り返ってみれば、ストレートの髪をした女性がそこにいた。
「ムシャーナが」
の声に今度はムシャーナの方へ振り返ってみれば、そこにはもうムシャーナとムンナの姿はなく、ただ立ち上る煙だけが残されていた。何があったのかマコモというこの女性に問われたが、ベルがすべてを答えてくれる。どうやらムシャーナはムンナの進化系であり、ムンナの危機に夢を現実化する能力を使って助けに来てくれたようだ。夢を現実化する能力ってすごいな。
マコモさんはムシャーナがお礼のように残していった夢の煙を手に入れて帰ってしまった。ベルはどうやら先ほどのムンナを捕まえるためにもうしばらくここで探すようだ。夢の跡地の見学を終えた俺たちはベルに別れを告げて、跡地を後にしようとした。
「……?」
サンヨウへとつながる森の中。がぽつんと立ち止まった。