俺がミジュマルをジョーイさんから受け取った後、俺たちは簡単な自己紹介をしてからポケモンセンターを後にした。
 は俺と同じ14歳で、イッシュには観光目的で来ていることを教えてもらった。その口ぶりから他の地方の出身であることは分かったが、彼女本人が深く掘り下げることはなかったので、俺も聞かないことにした。別にどこの地方出身だったとしても今からイッシュを旅する俺たちには関係がないからだ。
「トウヤくんはさ、どうして旅をしようと思ったの?」
 町中を歩きながらが聞いた。
「理由、ですか」
「うん。旅ってさ、親元を離れてするものでしょ。心細いし、慣れないことたくさんあるだろうに、それでも旅をしようって思ったきっかけ知りたくてさ」
 前を歩いていくの少し後ろで歩きながら考える。旅をする理由。そんなの考えたことはなかった。14歳になったらアララギ博士からポケモンを貰って、図鑑を貰って旅に出るというのは俺たちが旅立つ少し前から決まっていて、俺たちはそうやって旅立つんだよとそれが決まった時から博士から聞いていた。だから、俺たちが旅に出るというのは当たり前のようなものだったから理由なんて考えたことがなかった。成り行きで、というのが一番正しいかもしれない。旅に出るというのが俺たちの中での当然であって、旅に出ない理由も出る理由もそのどちらも俺たちにはなかった気がする。
「ただの成り行きで旅に出たんだと思います」
「そっか、成り行きかぁ」
 先導して歩いていたがくるっと振り返る。その顔は少し眉が下がっていた。
「でもさ、成り行きってだけでわざわざ旅に出るものなのかな。今はそう思ってるんだしても、きっとその理由は必ずあるものなんだと思うよ」
「そういうものなんですかね」
「そういうものだよ、旅って」
 ニカッとが笑った。理由、見つかるといいね。その笑顔に俺は少しだけ呆気にとられたが、4年前に一度旅をしたという彼女のことだ。俺よりも旅については数倍詳しいのだろう。きっと旅をする理由が俺にもあったのかもしれない。そう思ってみることにした。

「あ、そうだ。トウヤくん、私には敬語必要ないからね! 同い年なんだから。お互いフレンドリーに行こうよ」
「わかり、……わかった」
 に指摘されて気が付く。彼女は俺より先に旅をしていた先輩、ということで無意識に敬語になっていた。意識して敬語を外そうと頑張ってみる。……意外と恥ずかしいなこれ。
「それじゃあ、も俺のこと呼び捨てでいいから。俺も敬語外すようがんばるよ」
「うん、トウヤくん。じゃなかったトウヤ。これからよろしくね」
「こちらこそよろしく」
 再度彼女がにっこり笑った。俺も彼女に自然と笑い返した。
 という新しい人が増えて、予想がつかない旅になったけど。きっと二人なら楽しい旅になる気がした。