珍しい、と思う。
ソファーにくつろいでいた私の膝に頭を乗せる誠くんを見てそう思う。帰宅してソファーに座る私の膝に体を任せてから動く気配が全くない。あの誠くんがここまでだなんて、十神くんにこっぴどく絞られたりしたんだろうなあ、と勝手に予測してみる。きっとすごく疲れたんだろうなぁ。
お疲れ様の意を込めて、誠くんの頭をよしよしと撫でれば、消え入りそうな声で「もっと撫でて欲しい……」と言われる。恥ずかしがりで大胆な事をあまりしない誠くんがこんなことを言うなんて、本当に珍しい。あまりの珍しさに硬直するが、恋人の珍しい甘えに応えるべきだと思い、要望通り頭を撫で続ける。こんなかんじで撫でていたら良いのかな? と少し疑問に思うが、誠くんの小さなありがとうという言葉で思わず微笑んでしまう。私の甘えん坊な恋人がこんなにも可愛い。
しばらく撫でた後、今まで不動だった誠くんが起き上がり、そのままソファーの私の隣に座る。
「元気出た?」
「すごく」
「それならよかった」
未だ疲れた表情であったが、それでも笑顔で元気になったと返してくれたのなら僥倖だと思って微笑んで頷く。
「さん、何があったか聞かないんだね」
「私が根掘り葉掘り聞くことじゃないと思って。誠くんが話したくなったら何時でも聞くよ」
「うん、ありがとう……ボク、さんのそういうところがすごく好きだ」
誠くんの突然の告白に顔が熱くなる。もう恋人同士とはいえ、誠くんの直球の好意には未だ慣れない。ありがとうと素直に返すつもりが、実際に出た声はとても小さくて。誠くんがその声にふふっと笑って「可愛い」と蕩けた表情で言うものだから、さらに顔が熱くなってはまた可愛いと言われるのだった。思わず慌ててしまえば、視界がぐるりとまわる。視界には天井、そして誠くんの顔が。誠くんに押し倒されたということを理解するには時間はかからなかった。
「ま、ま、」
「さん」
彼の名前を呼ぼうとしても上手く声が出ない。私を見下ろしている誠くんを見れば、切なげな目線を向けているその目と目が会う。その姿が酷く扇情的なものだから思わず固唾を呑んでしまう。
頬を赤く染める誠くん。誠くんの手は私の手を握り、指が私の手の甲を撫でる。ぞくりと背筋に何かが走る。あ、これ、やばい。
「ボク、今、すごくしたいんだけど……ダメ?」
その口から出てきた言葉はあまりに甘くて。私はいいよ、としか返す言葉がなかったのだ。