玄関でべろんべろんになって帰宅した誠くんを迎える。お酒臭い。ふにゃふにゃとした笑顔を浮かべた誠くんにどうしたものかと悩んでいたら、葉隠くんから「すまん!」というLINEが届いた。貴様がクロか。今度会ったらどうしてやろうかと画面を見ながら考えていれば、誠くんに抱きつかれる。おお、素面の彼なら絶対やらないことだ。
「ボクが居るのに、スマホなんて見ないでよ」
「っ!」
耳元で囁かれた言葉にビクリと反応している隙にするりと手元のスマホを奪われる。なんというか色気が凄い。凄まじい。もしかして狛枝くんですか? でも身長は私と変わりないからそんなことはなかったね。よかったよかった。いや良くない。
そのまま私は壁に追いやられる。おい本当にこの人酔ってるんだよね? 手際良くないか? 普段の彼からは全く考えられないんだけど。この状況はとてもまずい。前方に酔っ払いこと誠くん。後方は壁。逃げられない。大変まずい。
「好き……」
「ひょあっ!?」
「葉隠クンがの何処が好きなんだって聞いてきてさ……そんなの当たり前だっていっぱい話してきたんだけど……」
これを聞いて私は葉隠くんに合掌した。アイツはクロだが既にオシオキは受けたようだ。今度バットでフルスイングくらいで許してやろう。そんなことより目の前の誠くんだ。どうやらお酒が入ると惚気を振りまく様になるらしい。それは私にとっても第三者にとっても大変被害を受ける筈だ何とかしなくては。
「何考えてるの?」
「ひっ!」
「ボクの事では無いよね?」
つーっと誠くんの指が薄着だった私の背中を撫でた。思わず変な声が出てしまう。その反応に誠くんは目を細めて笑った。
「な、な、何してるのかな誠くん!」
「秘密」
「秘密って言われても! ひゃっ!」
気が付けば彼に抱き竦められた形になっていて、体を這う指の数は増え、骨抜きにされてしまう。恥ずかしさでもう頭の中は真っ白なのに、顔に熱が集まって顔は真っ赤に染め上がってしまった。そんな顔を見て可愛いと誠くんは満足そうに笑う。
「ボク以外のことが考えられないように、ね?」
その言葉と同時に唇を奪われる。触れるだけの短いキスだったけど、それに何故か物足りなさを感じてハッとする。私はもう完全に彼に飲み込まれてしまっている。酔ってしまったのはどっちなのだろう。そう思いながら誠くんのベッド行こうかという言葉に頷いてしまったのだった。