「それじゃ、さよなら」
隣の席のさんがボクに言う。ボクは笑顔でまた明日ねと返す。
放課後、部活も何も無い日は彼女はすぐに帰ってしまう。ボクはそれを見送るしか出来ない。だってボクはただのクラスメイトでしかないんだから。恋人でもなんでもないただの友人であるボクは教室を出ていく彼女を見送るだけだ。一緒に帰ることもない。恋人だったなら一緒に笑いながら寄り道だってしたのかもしれないな。なんて夢想をしては悲しくなって自分の帰る準備を始めた。きっとボクの心なんて彼女には伝わりやしないし、ボクもきっと伝えることも無く高校生活が終わるのだろう。少し寂しいけれどボクはそれでいいと思ったから別にいいんだ。
懐かしい夢を見ていた気がする。目を覚ませばボクはソファで横になって寝ていたようだった。これが見つかってたら怒られてたななんて笑う。今日はボクが先に帰る日で良かったなんて思った時、ガチャと扉が開く音と「ただいま」という短い声。寝ていた事がバレないようにささっとソファを片付けて迎えに行く。両手に抱えていた重そうな荷物を取ってあげておかえりと笑えばがキョトンとあっけに取られた表情をした。
「え、何かあったの?」
「なんで?」
「なんかすごくうれしそうな顔してるから」
今度はボクがキョトンとした顔になった。うれしそうって、そんな嬉しいことあったかなぁなんて考えているとがあははと笑う。よくわかんないけどいい事あったんだねと笑うからボクもつられて笑ってしまう。
「ご飯作ろっか」
「ボクも手伝うよ。一緒に作る方が早いし」
「ありがと」
一緒にボクらは歩き出す。きっと昔のボクなら考えもつかなかった風景だなんて思う。寂しくてもそれでいいなんて思っていた昔のボク。今ならそんなこと思えやしないよ。だって一緒に居られるのがこんなにも幸せって知ってしまったんだから。