「誰かの為に死にたい」
 何気無く呟かれたその言葉にボクは顔を上げる。
 自由時間に図書館に来ていたさんがぽつりと呟く。「死ぬのなら誰かの為に」と。
「どうして」
「こんな生活の中だし。いつ殺されるかも分からないならせめて、ね」
 コロシアイ学園生活の中。ボクらはいつ殺されるか、殺すのか分からない日々を送っている。誰にどんな動機で殺されるのか分からない。それならいっそ誰かの為に死んで死に意味を持たせたいと彼女は語る。
「それなら、それならボクの為に死んでよ」
「苗木くんの為に?」
「うん」
 きょとんとした顔がボクを見る。とんでもないことを言ってしまった気がする。苗木くんって結構大胆? と笑う彼女にボクは恥ずかしくなるが、それでもボク以外の誰かの為にさんが死ぬのは嫌だった。それならいっそ、―ここまで考えて頭を振る。違う。ボクは彼女と一緒に生き残る。彼女を誰かの為に死なせてなんかやらない。
 決めた、と彼女が呟く。
「なら私は苗木くんの為に死んであげる」
 さんが微笑む。
 上等だよ。キミを絶対死なせはしないから。