さんから便りが届いた。
可愛らしい文字で結婚しますと書かれているのを見たボクは今まで築きあげた何かが崩れていく気がした。
さんとボクは俗に言う幼馴染というものだ。
幸運に振り回されたボクらは平凡な幼馴染として一緒過ごせていた訳では無いし、なんなら一緒に居た時間の方が少ないかもしれない。
それでもボクはさんのことが好きで大切だったし、希望ヶ峰学園で再会した時は死ぬほど喜んだものだ。自意識過剰でなければ彼女も同じ気持ちを抱いてくれていたのだと思う。
でも、ボクらはそれ以上にはならなかった。なれなかったのだ。ボクよりも素晴らしい才能に囲まれた彼女の邪魔をするなんて烏滸がましいと感じられたし、例え彼女が他の誰かと親しくしても幼馴染であるボクとの絆よりも深いモノを築くことはないと過信していた。ボクらが卒業して疎遠になった今でも連絡を取ればまた昔のようになれると思っていた。
その結果がこれだ。ハガキの中で幸せそうに微笑む彼女が憎らしくて憎らしくて、愛おしい。
根拠の無い自信に胡座をかいていた結末がこれだなんて。

ボクは震える手で欠席に丸を描く。
嗚呼、結局ボクは現実を見れない浅ましい人間だったのだ。