ダイヤモンドの底では踊れない

 先程よろしく頼むと渡された便箋をボクは見る。
 やんちゃそうだった彼の見た目からは想像つかない綺麗な文字で彼女の名前が書かれているのを見た時は思わず顔を顰めてしまいそうになった。
 本科の中でも平凡そうに見える。取っ付きやすいから。そんなことを言って彼はボクにソレを渡した。ボクが平凡だとかそんなことは別に気にしないし、言われ慣れている。むしろそういう理由で手元のこの便箋をボク経由で渡そうと考える人が居るなら好都合だ。だって、ボクも苗字さんのことが好きだから。手紙を受け取るたびに、よく知らない彼らが屈託のない笑みで苗字さんへ好意を語るたびに心のどこかから湧き出てくるどす黒い感情。その感情に任せるように便箋を握り潰す。ぐしゃりと音を立てて呆気なく潰れるソレ。丸めてぐしゃぐしゃにしてゴミ箱に捨てる。あーあ。ごめんね、名前も知らないあの男の子。
 ボクに渡したのが運の尽きだったね。

title by 天文学