目が覚めると、そこは森でした。
突然すぎて何にもわからない。だって、昨日は疲れたから早く寝ようってベットにダイビングした覚えしかない。こんな鬱蒼とした森に来た覚えなんてない。
まさか夢遊病でも発症したのではなかろうか……。いや、自分は大きいストレスとか抱えてないし。多分それはない。
そもそも目が覚めてなくて、ここが夢の中なのかもしれない。きっとそうだ。多分寝たら今度は自分の部屋で起きるだろう、夢なんだし。だからおやすみ、さよなら森。
「…」
なんかが私の名前を呼んでる気がするが、そんなことは関係ない。私はこのまま寝るんだ、寝させろ!
「目覚めるのじゃ……」
お願いだからちょっとでも寝させて? 目覚めたらどうせ森でしょ? もうなんかわかってるよ。ほんとはここ夢なんかじゃないし、たぶん寝たとしても起きるのは自分の部屋のベッドではなく、この森なんだろう。
でも、ちょっと受け入れがたいから少し現実逃避させてほしいんだけどな。
「も~~っ! デクの樹サマがお呼びなんだから早く起きなさいヨ!」
無視を決め込んで、寝返りを打った私に次に語り掛けたのは、先ほどまでの老人のような声じゃなく、かわいらしい女の子のような声だった。
いや、声だけじゃない。閉じた瞼越しに明るい光の玉が、私の顔の前でぴょんぴょんし始めている。めっちゃまぶしい。
「ちょ、っちょ、まぶしっ! 起きます起きます!」
あまりの輝きに飛び起きる。瞼越しにも分かった強い光で一瞬目がバカになりかけたが、そのうち先ほどまで見ていた森だということが目でも確認できた。やっぱまだ森の中ですよねー。
「っもう! 寝坊助なんだから!」
憤慨したような声が聞こえて、そっちを振り返る。女の子がいたのかと思ったけど、違う。光の、玉?羽もある……。えっとこれは……。
「よ……妖精……?」
「そう! アタシは妖精のナビィ! よろしくネ!」
妖精。自然霊の一種の生き物、というか伝説とかの生き物。そんな妖精が、今、私の目の前に、いる。
っていうかこの子、今ナビィって名乗った?
「ほ、んとにナビィ……?」
「そうだヨ? どうして?」
「……え、」
「え?」
「ええええええええええええええええええええええ!!!」
私の声が森にこだました。
いやいやいや、だって妖精のナビィと言えば、超名作ゲーム時のオカリナのナビゲーター役ナビィさんしかいないじゃないか! そんな! 有名人が! 今! 目の前にいる!
「すみませんサインください……」
「ナビィ手が無いからサインかけないヨ……」
「あっなら握手でいいので……」
「手が無いから羽でもいいかな? 羽が折れない程度の力なら大丈夫だから!」
「神対応か? 流石ナビィさんは格が違う……」
握手をするために近寄ってくれるナビィさん。ファンサすごい……好き……。あったかいし、ほわほわした輝きでかわいい……。実物すごい……。