「苗木くん、かくれんぼしようよ」
 そう言った彼女は背の高い向日葵畑を駆け出す。鬼がどっちかなんてまだ決めてないのに。ボクはそんな彼女を追いかけて遮る向日葵を手で押しのけながら走った。年甲斐もなく全力で走ったものだから息が上がる。久々に走った足はもう無理だと悲鳴を上げていた。それでもボクは足を動かす。だってまださんを見つけてない。背の高い向日葵がまとわりつく。ああ邪魔だ、これのせいでさんが見えないじゃないか。必死になってかき分けながら走るけど、向日葵畑に溶けてしまった彼女は二度と見つからなかった。もう降参だよ、ボクの負けでいいからもうそろそろ姿を見せてほしい。