「ね、アイス買ってよ」
 私の頼みごとにシンは嫌そうな顔をする。
「なんでだよ」
「だって遅れてきたじゃん。買ってくれないと許さないから」
 更にしかめっ面になるシン。感情がすぐに表に出る彼を見て、私は思わず笑ってしまう。
「あーあ、買ってくれないと、私、幸せになれないなー」
「コノヤロウ」
 そんな風に言いながらなんだかんだで財布を取りだしたシン。むんずと掴んだ千円札を私に手渡してきた。
「選んで来いよ、待ってるから」
「えー、一緒に食べようよ。せっかくなんだし」
「せっかくも何も元は俺の金だけどな」
 呆れたように言うシンの手を引っ張って、一緒にコンビニに向かう。こうやって付き合ってくれるから、好きなんだよね。
 お互いおそろいのアイスを買って、各々のタイミングでかぶりつく。私は早くがっつきすぎて頭がキーンってなってしまって、シンに笑われてしまった。
 彼が屈託のない笑みを浮かべて声を上げて笑っている。それが、先程の泣いていた"彼"とは全く違っていて、心の底からホッとした。
「……ナニ笑ってんの」訝し気なシンがジト目でこちらを見てくる。
「ううん。なんでも。幸せだなって思っただけだよ」
「現金な奴」シンがまた笑う。嬉しそうな笑顔だった。