恋する温度

 南国特有のカンカン照り太陽が肌を焼く。雨の降ることの無いこの島は今日だけではなく毎日のようにジワジワと皮膚を焦がして行くのだから不快で仕方がない。データでしかない太陽とプログラムにダイブした仮の体なのに日焼けというものが絶妙なバランスで再現されている。正直煩わしい。
 未だに腫れの引いてない皮膚に容赦なく日光はさしてくる。ひりひり痛い。日焼け止め塗ったのになぁ。暑いからといって半袖にしたのがダメだったのか。後悔先たたず。こりゃ採集が終わる頃にはまた腫れそうだ。パーカーを置いてきてしまった過去の自分を恨みながら手元の採集を続けた。
「日焼け痛そうだね」
 そう言って笑うのは同じ場所に採集に来ていた狛枝くんだ。不健康にも見えるような白い肌。暑さを感じさせないその涼しい笑顔に私は苦笑を漏らした。
「ちょうどパーカー置いてきたのを後悔してるトコ……」
「今日も暑いもんね。長袖着たくなかった気持ちは分かるよ」
 手でパタパタと扇ぐ狛枝くん。手ではそうやって扇いでいるけれど、長袖のパーカーを着てるのに顔には汗一つかいてないし、白い体に日焼け跡が見えることも無い。なんだよコイツ嫌味か。同じくらいの運動量の癖してイケメンになると汗もかかないのかと八つ当たりともいう恨みを込めた視線をじっと向けていれば、何と勘違いしたか狛枝くんはどうしようもないと言いたげに眉を下げて笑った。そして私に来るように合図する。何事かと思い近づけば彼が着ていたパーカーをそっと肩にかけられる。
「はいこれ」
「えっ?」
「ボクなんかので良ければだけど」
 日焼けこれ以上酷くならないようにね。狛枝くんはそういうと採集に戻ってしまった。ぽかんと呆気に取られた私は正気に戻り、かけられたパーカーを握る。折角の温情を無視するのは良くないと思ってパーカーを羽織ろうとする手が覚束無いことに気付いた。ふわり。羽織ると服から狛枝くんの匂いがした。なんだかドキドキしてしまって落ち着かない。顔がすごくあつい。きっとこれ気温のせいじゃない。もしかしてこれって。