
ねない子だれだ
DFFの12回目の前にホープが参戦してたら?という妄想の産物ifです
微かな音で目が覚める。
毛布から身をよじせると、本当に些細な音を立てただけだったのに、目の前の少女は視線を動かして目を覚ましたホープを確認していた。
「起きるにはまだ少し早いよ」
少女はそう微笑む。彼女の背後にはまだ深い夜が広がっており、明かりといえば少女を照らし冷える夜を温めてくれる焚き火だけだった。焚き火は小さな音を立てて燃え上がる。燃えて薪がまたひとつと炎に消えていき、残った薪はまた炎の中へと崩れていく。この音で目が覚めたのだろうか。
そんなふうにぼんやりと考えて続けていたからだろうか。目の前の少女は少し眉尻を下げて「寝れない?」と不安げな声をあげる。
「あ、いえ……。ちょっとぼんやりしてただけというか」
「そう? それなら良いんだけど」
ホープの言葉に少女は安心したような顔を見せたかと思えば視線を外してその笑みを引っ込めてしまった。
警戒しているのだ。いつ敵が来るか分からない状況で、少女は眠りもせず備えている。戦いに不慣れなホープが少しでも安眠を得られるよう、彼女自身の睡眠を削って。ホープとそう歳の変わらない彼女が。
「さん」
「なに?」
彼女は振り返ってはくれなかった。ただ声だけが優しい。
「僕と変わりませんか?」
視線が動いた。再度視線が自分を捉えたのを確認してホープは続ける。
「見張り、僕だって出来ます。最近は僕だって少しは戦えるようになって……そりゃあ貴女と比べれば屁でもないかもしれないけど。だから」
「大丈夫」ふんわりとした静止だった。
「大丈夫、気にしなくても」
「でも」
「私、慣れてるから。ホープは成長期でしょ。ちゃんと寝ないと」
どの口が、とホープは思ったが言えなかった。密かな自己嫌悪が首を出す。
彼女の手が伸びてズレていた毛布を肩まで掛けてくれた。肩を優しくぽんぽんと叩いて笑う。
「ホープは優しいね」
とてつもない皮肉だ、とホープは思った。彼女にその気は無いことは知っていたけれどホープにはそのようにしか聞こえなかった。そして何よりもそんな言葉に安心感を、喜びを感じてしまう自分が何よりも嫌だった。
自分のちっぽけな優しさなんて、貴女の大きな優しさに包み込まれるしか無いのに。そう思っては毛布を握った。ホープはそれしか出来なかった。