
優しい劇薬
苗木君はちょっと優しすぎるんだよね。
そう友達に送ったのは普段の彼の事ではなく、ちょっと言いにくい夜の事。別に不服がある訳じゃないけどマンネリも解消しなくてはと思って友達に普段ならしない話題をふっかけた。それにしても返信遅いな。スマホの画面を眺めながら返信を待てばスマホに落ちる影。その影の主の検討が着く前にするりと手から抜き取られていく私のスマホ。それを盗み見た彼は少し頬を赤く染めて私に向き合う。
「これ、たまにはボクが本気になってもいいってことだよね」
少し恥ずかしそうに言う彼に呆気に取られるのも束の間、ソファーで寝転がっていた私に覆い被さる彼。
ちょっと待ってよ。待たない。
そんな牽制も意味を為さず、苗木君はネクタイを外す。
「今日は容赦しないから覚悟してよ」
少しの羞恥と怒気の裏に隠された真剣な彼の瞳が私を貫く。私は観念するように「ひゃい……」と目を閉じるしかなかった。