光源のあなた

「眩しい」
 両手で瞼を押さえながら呟く。

 今の自分には見えないが、対面するように私の目の前にいるはずなのは日向君。私が目を覆う前から日向君が動いていないならきっとそういう立ち位置のはずだ。今は私が目を覆っているから確認はできないけど。
「別に俺、何にも変わってない筈なんだけどな」
 前方から日向君の声。彼はそう言うが、私は明らかに変わったと思う。結構眩しい方向に。
 希望更生プログラムに入る前から変わったというと、プログラムに掛かる前の日向君は厳密には別人ともいえるので仕方ないと思うが、問題はそこじゃない。
 プログラム中の彼とプログラムを経た後の彼。明らかに眩しさを増しているのだ。

 それを象徴しているのが笑顔。南国での彼も笑顔がなかったわけじゃないけど、今の彼が浮かべる笑顔に比べると全く違う気がする。
 南国での日向君の笑みはどこか無理しているような、そんな感じが拭えない笑顔だった。でもプログラムを経た彼の笑みはどうだ、迷いも無理も何もないような満面の笑みを浮かべることが増えた。純度100%の笑顔。これが眩しいと言わざるしてなんと言い表せるだろうか。
 そう考えていると、ハハ、と困ったような呆れたような日向君の笑い声。
 日向君が笑った。たったそれだけなのに目の前の眩しさがまた増したような気がして、私は更に瞼を押さえる力を強める。掌を貫通する眩しさは私が対応しきれないのでやめてほしい。
 しばらくそうしていると、私の手首に柔らかくて温かい感触。それの正体がつかめないうちに、無理矢理というほど強くない力が私の手を顔から引きはがす。はがされた自分の視界には日向君の顔が。
「俺はの顔の方が眩しいと思うぞ」
 ふんわり、という形容詞がばっちり似合う優しい笑み。それを目の当たりにされた私の顔は爆発的な温度をもって楽々と臨界点を突破する。
「俺はのこと眩しいくらい好きだよ」
 トドメだった。
 眩しいものを見るように目を細めて笑う彼の笑みから、眩しさが次々と私を刺していく。直視できないそれに私は悲鳴を上げるようにうめいた。

 絶対、絶対日向君の方が眩しい!